1989年5月28日(水)「赤旗日曜版」

女子高生監禁殺人事件を考える
手紙、電話…読者の反響をもとに

 女子高生監禁殺人事件について、二度とこんな
悲惨な事件をくりかえさせないために、いったい
どうしたらいいのか−−。さまざまな角度から読
者のみなさんとともに考えようとキャンペーンを
つづけてきました。この間、手紙やはがき、ある
いは電話で多くの反響が寄せられました。今回は
そのおもな内容を紹介し、疑問、質問についても考
えてみました。

両親のこと
ああなる前になぜ対処を

 読者から寄せられた反響のなかで、もっとも多かったのは、女子高生が監禁さ
れていた家の両親のことについてでした。両親が共産党員だったこともあって衝
撃を与えました

 「親の責任が
 一番大きい」

 「驚きました。ああなる前になぜ親は対処できなかったのでしょうか。子ども
の転落をくいとめる努力をしたのでしょうか。残念でなりません」 (大阪、女教
師) という感想や、「記者座談会 (4月30日号) のいっているとおりです。よく
書いてくれたと思います。やっぱり親の責任が一番大きい。とくに父親が体をは
ってでも子どもに対処すべきです。いろんな背景があると思いますが、家庭環境
に問題があったと思います。私も同じ病院という職場に勤める親として、女の
子をもつ父親として、人ごとではない事件です。あの家は異常です。部屋にカギ
をつけることと子どもを自立させることのはきちがえがあったのではないか。そ
れにしても一戸建ての二階でのできごとに気がつかなかったのでしょうか」 (埼
玉、男性) 。
 現在、両親に直接取材できない状況にあります。したがって関係者などからき
いた限定した範囲でしかのべられません。
 いずれにしても、両親は女子高生が二階にいることに気づいていなかったとい
うことではありません。
 両親は十二月中旬ごろこの女子高校生を二階の部屋から連れだし、事件にかかわ
った二男らといっしょに食事をさせ、家に帰るよう送りだしています。
 もっとも、そのとき両親は、その女子高生が長期に監禁されていたというよ
り、以前から非行グループの仲間の何人かの女の子の声がきこえていたことから
そのうちの一人と思っていたと報道されています。
 この認識の甘さからか、女子高生を家の外まで送りだしたものの「一人で帰
れるから」ということで自宅まで送り届けてはいません。少年たちは彼女を連
れもどし、やがてそれまで以上の残忍な暴力をふるい、殺害するのです。あの
とき女子高生の自宅まで送るなり、女子高生の両親に場所をはっきり知らせるな
りしていたら事件は防げたはずですし、両親の認識の甘さを、つくづく残念に思
います。

 世間的な体面
 にとらわれず

子どもの非行の進行状況を父親がどう認識していたかも重要です。
 二階の部屋が非行グループのたまり場になっていること自体、異常なわけで
す。この段階で、親の必死の対応が必要だったのではないでしょうか。世間的な
体面を気にせず、職場の仲間や、近所の人などの協力もえて断固とした処置をとる
べきでした。

学校は、地域は
暴力礼賛の教育が…

 「あの学校は暴力礼賛の学校だった。こういう教育方針が子どもに大きな影響
を与えていると思う。世間ではすぐに親をせめるが、それで事がすむとは思えな
い」 (東京、男性) 、「周囲の人たちにも責任があるのではないでしょうか。た
まり場になっていることをまわりの人は知っていたのではないでしょうか」 (埼
玉、女性) 、「以前に問題になった家庭内暴力や親殺し、登校拒否などは絶える
ことのないものだと思います。子どもをとりまく社会や家庭の環境をよりよいも
のにすることがおとなの使命だと思います。まず身近なことから心がけて住みよ
い社会にしたいものです。 (神奈川県、女性) などの声も。

 住民の連帯感
 もっと強めて

 学校や地域の問題はこれまで報道してきた通りです。同校は一九八五年と八
六年に生徒指導モデル校に指定され、体罰や暴力によるきびしい管理教育の方
針をとっていました。こうした”力”の教育が生徒の心をゆがめ、傷つけ、やが
て暴力の問題行動に走らせる一つの要因にもなったと考えられます。

 また地域の問題では、新興住宅地として人口の流動がはげしく住民の連帯感が
薄い、そのこともあってこの事件にかかわった少年グループの背後に暴力団がい
たことも十分把握されていなかったという状況がありました。

活動家の子育て
親子、夫婦の絆(きずな)しっかりと

 もっと子らと
 接する時間を

 「『女子高生監禁殺人事件を考える』」に関連した手記 (5月7日号) 、東京・
足立区の共働きさん。よい意見で感動しました。負けてはなりません。よい父母
になりましょう」 (大阪、男性) 。「わが家も共稼ぎで活動しています。他人ご
ととは思えません。活動していることが逃げ、甘えになってはいけない。親子、
夫婦の関係をしっかりきずかねばと思います」 (東京都・女性) 。「今回の事件
は一人ではできない集団ならではの犯罪だ と思い ます。その集団は、今日の学
校教育の”落ちこぼれ”の集団だったようです。昔もそのような子どもも多くお
りましたし、”いじめ”もありました。しかしクラスに一人や二人は必ず両手を
広げてそれらを止める子どもがおりました。それはお母さんがとても苦労してい
るうちの子であったり、長く入院している家の子であったり、工務店とかレスト
ランを経営している家の子であったり、人の出入りの多いところの子どもの場合
が多かった の ですが…」 (兵庫・女性) 。こうした決意や感想がたくさん寄せ
られました。
  「日曜版を読みました。私も、子育てをしながら同じ矛盾に悩んでいます。も
っと早く帰ってやれたらと思いながら、ギリギリのところでがんばっています。
とても人ごとではありません」 (神奈川、女性) 。「夫婦が党員の場合、家族
との接し方を話しあい、もっと子どもと接する時間をつくるべきです」 (長野、
女教師) 。
 こうした主張など、活動家の子育てや家族のあり方についての反響もたくさん
きました。
 
 また、「『赤旗』で特集されたことに感謝します。問題は二度とこんな事件を
起こしてはならないこと。そのためにも共産党の会議でも積極的に問題にしてい
くようにしなければならないでし ょ う」 (大阪、男性) というものや、「党員
の子どもの行動について所属する支部に相談していたのだろうか」 (男性) とい
う疑問も寄せられています。

 党の会議でも
 よく議論して

 夫(四九)は薬局に勤務する一方、入党以来約二十年、職場がある地域で「赤旗」
の配達、集金をつづけ、日曜日などにも出て活動、妻(四二)は看護婦でした。
 事件が起きたとき、支部の仲間や夫妻を知る人びとは、「信じられない」とだ
れもが驚きました。それほど職場では子育てや家庭のことを話していなかったよ
うです。
 昨年、「息子が大きくなっていろいろたいへんだよ」ともらしていました
が、支部に相談するというふうで はありませ んでした。
 二男が 傷害事件を 起こし、ことし一月下旬に警察につかまったときは、翌日
支部に報告。支部も弁護士を紹介するなどすぐに対応し、またなにか起きたらみ
んなで協力するからと激励しています。しかし、このときも、以前の非行事件に
ついては話していません。
 一方、支部の側も、党員同士が日常的によく知りあい、人生の転機にかかわる
ような 困難に直面 したとき、素直に相談でき、また親身になって話し合える支
部であったかという点では、十分ではなかったようです。多忙な医療業務に流
され、支部会議も定期的に開かれていませんでした。いま一人ひとりが痛恨の思
いで教訓をひきだす議論を深めています。

 社会や政治の
 変革と同時に

 東京の学童 保育 指導員 (女性) からこんな感想が届いています。
 「父母が共産党員であり地域の活動をしていたであろうことを思うと、私たち
母親で活動している者にとって、他人ごとではなく二重の衝撃です。わが子の幸
せを願うからこそ、わが子だけの幸せはないことを思い、よりよい教育、社会、
文化的環境をと活動しているからです。日々の忙しい生活のなかで、わが子を思
いつつも、会議や連絡に追われ、わが子の成長の大切な節目でのかかわり、なに
げない親子のゆったりした時間が欠けているのではないかと自問自答しているか
らです。
 ですから今回の事件を知ったとき、共産党の路線や活動とは関係ないけど、活
動家のあり方、努力しなければならないことについて真剣に謙虚に考えなければ
ならないと思ったのです。きっと多くの人がそう思ったのではないでしょうか。
そばについて口をだしていさえすれば親子の絆 (きずな) が強まり、よく育つわ
けではないでしょうが。
 子どもたちが安心して育つ社会をつくるという必要な活動をしながら、活動家
の私たちはどんなところを改善し、努力したら、だれもがくつろげ、信頼しあえる
家族、家庭をつくることができるのか。個々の家庭だけの努力だけでなく、みん
なが地域や職場の活動のなかでどのような改善と努力をしていったらよいのか。
 私たちのとりくんでいる社会変革は、ただ社会や政治を変革することで達成で
きるのではなく、そのこととあわせて自分や家族を、また職場や地域のなかで自
分をより人間らしく変革することの両方が必要だと思います。いま、この自己変
革の努力が問われているのではないでしょうか。
 このことをみんなで考え実践していくことが、私たち活動する者自身にとって
はもちろん、さらに多くの国民に私たちがより信頼されるために、私たちにもと
められていることではないでしょうか」
 活動家の子育てや家庭について深く考えさせられました」