1989年5月3日(水)「赤旗」       注. 一部機種依存文字を『半角数字』に変更。
                                                 .注. 記事内の母子殺人事件(綾瀬母子殺人事件)は、1989年9月12日、
                         東京家庭裁判所は被告人3人に対し、刑事裁判の無罪に相当する                        
                         不処分の決定。詳細は綾瀬母子殺人事件 - Wikipediaを参照すること。

足立の中学校
卒業生の殺人事件にショック
全校保護者会を開く
非行克服へ真剣な討論

 東京・足立区でおきた女子高生監禁殺人事件と母子絞殺事件で、それぞれ逮捕され
た少年たちが卒業した足立区内の公立中学校(生徒数七百十四人)で二日夜、事件の概
要と今後の対応策について説明する全校保護者会が同校体育館で開かれました。
 同校は八五年、八六年と生徒指導のモデル校にも指定されました。しかし、当時は教
師による体罰があとをたたず、昨年までの数年間は毎年のように、卒業時期には校舎
への投石、ボヤ騒ぎが続いていました。最近では教師集団の努力で体罰はなくなってい
ました。
 午後七時に始まった集会には父母や地域の人たち約六百人が参加。同校校長(五九)は二
つの事件について、「断腸の思いで言葉もありません。まことに申しわけありません」
と深々と頭を下げ、黙とうしました。
 今後の指導の重点として教育相談の推進、長期欠席生徒の解消を強調しました。区教
育委員会からは増田精一教育委員長と八木幸男教育長らが出席。八木教育長は今後の対
応策について、事件の真相を正確には握するため対策チームを設置したこと、学校内外
の生徒の生活実態をつかみ、家庭と学校、地域の望ましい関係づくりをすすめることを
説明。『1』生命の尊さをわからせる教育『2』体罰やいじめのない人間尊重教育『3』一人ひとり
の能力を伸ばす教育−−などを示しました。
 父母らの中にはしっかりメモをとりながらきき入る姿もみられ、質疑応答では非行克
服のとりくみへ真剣な討論が予定を一時間超す午後九時半までつづきました。


 本音で話し
 合える場を

学校につめよる声も

 一時間四十分におよんだ質疑応答では十数人が発言。出席者によると「こんな学校
に子どもを行かせたくない」「校長はいじめがおきていたのを知っていたのか」など学
校側につめよる発言もありましたが、「家庭、学校、地域の環境が複雑にからみあって
いる。学校だけをせめられない。地域の環境をよくすることも大事ではないか」(父
親)という意見や「もっと学年別に分けて本音で話し合える場所を」(父親)との意見
には拍手がわいたといいます。
 参加した母親の一人は、「地域のことを真剣に考えている親が多いことがわかりま
した。教育委員会はゲームセンターをなくすとか、子どもにとっていい環境をつくるこ
とに力を入れてほしい。失った生命をムダに終わらせないように、本音で語りあえる学
校をつくりたい」と語っていました。