1989年5月23日(火)「赤旗」
追跡女子高生監禁殺害事件 《4》
遅すぎた相談=@「今度」の機会訪れず

 C(16)の生活が崩れ、非行に走っていったころ、両親はそれにどうとりくんで
いたのでしょう。

  警察に相談したが
  有効な手だてなし

 Cが高校を中退し、事件に関与した少年グループとのつきあいを深めていった
秋。母親は、グループのAやBの家を何度も訪ね、「うちの子とつきあわない
ように、いってほしい」と頼んでいました。Aの母は、そのたび「私が何かい
えば殺される」と泣き崩れたといいます。Cの母親はCが窃盗事件にかかわった
容疑で警察に呼ばれた際、相談をもちかけています。AやBの母親も、何回とな
く警察に相談していましたが、有効な手だてはとられませんでした。
 夏から秋にかけ、わずか三ヶ月の間に急激に変化し、荒れていくわが子。そ
の姿にとまどい、奔走しながら、母親は体重が減るほど精神的にまいっていたと
いいます。
 その母親の切実さとはちぐはぐに思えるほど、周囲の知人などへの相談はた
めらいがちなものでした。
 昨年六月ごろ、近くに住む友人に、父親から「子どもの非行のことで相談したい
のだが、いい先生はいないだろうか」と電話がありましたが、翌日には「夫婦で相
談したが大丈夫そうなのできのうのことはなかったことに」と断りがありました。
 九月ごろにも、父親は町で別の知人に出会った際、「息子のことで困っている
んですよ。今度相談にのってください」ともちかけています。しかしその「今
度」の機会はとうとう訪れませんでした。そのころ、悩み疲れていた妻に、夫は
みずからとまどいながらも「思春期の子どもが荒れるのはよくあることだよ」と
なだめていたといいます。しかし現実にはまさにそのころ、CはAを通じて暴力
団ともつながり、今回の事件に向かって荒廃への道を引きずられていました。

  悩みを打ち明けて
  くれていたら…

 Cの両親は共産党員でしたが、住んでいる地域では活動をしておらず、地域の
党支部のほとんどの人たちは両親が党員であることを知りませんでした。「子ど
もが育っていく地域。そこで親たちがしっかり結びついていることがどんなに大
切か…。このご両親がそういう結びつきのなかにいて、地域に悩みを打ち明け
てくれていたら、と残念でなりません」。事件後、地域の党員の一人はそう語り
ました。
 両親は、所属する職場の党支部では息子のことをどう相談していたのでしょう
か。
 父親は、酒の席で支部の人たちに「家が荒れて大変だ」と話したことがありま
したが、それ以上の突っ込んだ話にはなりませんでした。支部にCの非行の話が
伝わったのは事件後の今年一月末。Cが別の事件で逮捕されたときでした。
「息子がひったくりで逮捕された」という内容でした。
 当時監禁殺害事件≠ヘすでにひき起こされていましたが、まだ発覚前でし
た。
 窃盗などぬきさしならない犯罪にいたる前に、すべてをさらけ出し、相談して
いれば…、と大きな悔いが残ります。あわせて、子育てを含む家庭の悩みを互い
に出しあい、力になりあうことのできる党の活動の大切さも、改めて胸に
刻まれねばならないでしょう。                  (つづく)