‐いつかの奇跡‐ M・I・R・A・C・L・E × 8 あと少しだし このまま朝になるのを眠らずに待ってみない  奇跡の瞬間に会えるから 汚れなき君は純粋な眼差しで言う 「ねぇ奇跡って何」君が君のままでいられる事  僕が僕のままでいる事を朝焼けが許し 微笑んでくれる事  君は頭を僕の肩にのせ「よく分かんない」と  しかめっ面で そのまま黙った 初冬のベランダ  毛布に包まり 二人で一つのホットミルクと吐く息の白を追う  沈黙怖がるほど僕等は浅くない 鳶目怖がるほど僕等は弱くない  奇跡はもうすぐ もうすぐ奇跡は  時間が人を変えてしまう事はよくある  人が人を変えてしまう事もよくある  出会いが人を変えてしまう事だってよくある よくある よくある話さ  一体誰が君を変えたんだろう 一体誰がそうさせたんだろう  何も聞き出せず きっと聞いたって 君は相手にしない  その話が嫌いだから 君の嫌がる事が僕は嫌いだから 僕は聞かない  愛しさを越えた情は 例え手を掴める距離にいたとしても  こんなにも遠いんだね でも知ってるよ僕は  いつかの奇跡の話しを本当は君は覚えてるんだろ  孤独に茶化される中 信じてたんだろ 時間が心を変えてしまう事はよくある  心が心を変えてしまう事もよくある  別れが心を変えてしまう事だってよくある よくある よくある話しさ 一体何が僕を変えたんだろう 一体何がそうさせたんだろう  僕が欲しがる事を君は嫌いだから 君は知らない  愛しさを越えた情は 例え手を掴める距離にいたとしても  こんなにも遠いんだね こんなにも遠いんだね 少女から女性へ 大人になっていく事を恐れず 人になっていく事を拒まず 傷みの中で心と体を母性という宇宙で包む  どこでも争いや優劣なんかにかまける僕達 男は小さい 本当の不条理や無償の愛を 男のプライドを挫こうと 女は復讐にやってくる 女は深い 膨大 巨大  女は待ってるのではなく 選んでいる  女は避けてるのではなく 任せている  奇跡を待ってるのはおそらく おそらく おそらく僕の方だ あと少しだし このまま朝になるのを眠らずに待ってみない  奇跡の瞬間に会えるから 汚れし君は垢染みた目付きで言う 「ねぇ奇跡って何さ」君が君のままでいられなかった事  僕が僕のままでいられなかった事を 朝焼けが許し微笑んでくれる事 君は僕の肩に乗せていた頭を退け「退屈」と 渋っ面で そのまま黙った 初夏のベランダ  浴衣を羽織り 1人で気の抜けたコーラの足掻きの泡を追う  沈黙怖がるほど僕等は深くない 鳶目怖がるほど僕等は強くない  奇跡には何か意味があるんだと思う  遥か昔 再会の愛を誓っていたかもしれないし  あの世で二度と会いたくないと願っていた二人かもしれない  もちろん誰も知らぬ答えを僕が分かるはずないけど  だけど僕等が一緒に居る事は確かに奇跡