「ユノヒョン……」チャンミンは離れて座るユノを大きな瞳でじっと見つめ、 深いため息と共に言葉を吐き出した。 「僕ら、しばらく離れた方がいいんじゃないかと思うんだ…」 「チャンミナ…」ユノもまたチャンミンを見つめ返し、喉の奥から絞り出すような声で 「そうかもしれないな…」そうつぶやいた。  ズキン!! チャンミンは自分の心臓がドキンドキンと大きな音を立てて、早くなるのを 感じて悲しくなった。 {自分から切り出したのに、ユノヒョンの返事に傷つくなんて…} 本当は自分でも気づかない内に、 「なんでだよ!?」「そんな事言うなよ!」「離れたくない」 そんな言葉を期待していたのか!?  悲しみで自分の顔が歪んでゆくのを感じ、チャンミンは背を向けた。 寝室のドアノブを握りながら 「僕が出て行くよ…」小さな声でそう言い、寝室の中に消えた。  ユノは寝室に消えていく、チャンミンを悲しく見つめながら深いため息をついた。 「はぁー…  チャンミナ…どうしてわかってくれないんだよ… お前が一番なのに… いつもいつもどんな時だって、お前が一番なのに… 今だって、こんなに不安で、お前が俺の前から消えていくと思うと 震えが止まらないよ… こんなに愛してるのに…チャンドラ! なんで分かってくれないんだよ!!」 3ヶ月前 チャンミンがテミンから挑発を受け気にしていた頃 「ユノヒョン、何ニヤニヤした顔してメールしてるんだよ。誰から?」 仕事場に向かう車の中でずっとスマホから目を離さないユノに少しイラついた様子で チャンミンは聞いた。 「ん?なんか今日はやたらとメール多くて…たいした用事じゃないんだけどさ」 そう言いながらもまだ自分の顔を見てくれないユノにチャンミンは腹が立った。 {何だよ。最近ずっとあんな調子で…僕の話だって上の空で、聞いてんだか聞いてないんだか ヒョンは昔から友達多くて、誰とでもすぐ話せて、ドンドン友達増えていって… ヘタすりゃ動物にだって、花にだって話しかけて… …わかってる、わかってるんだ、頭ではちゃんと。 ヒョンはそう言う性格なんだって。 それがヒョンのいいところでもあるんだから… だからって、増やしすぎだろ…それでなくても忙しくて中々二人だけの時間ないのに… ヒョンはそんなの全然平気なのかな…}  そんなチャンミンに追い打ちをかけるようにユノは 「チャンミナ…今日ホジュンヒョンと飯食いに行ってくるよ」 {まただ…最近ホジュンヒョンとこ行ったり来たり… しょっちゅうだよ}    チャンミンは明らかに機嫌の悪い顔になり、返事もしなかったが メールに夢中のユノはその事にすら気づかなかった。  歌番組の収録現場の控え室 衣装も着替え、ヘアーメイクもすべて終わり、 二人だけで、出番を待つ間、相変わらずスマホをいじるユノに 「ヒョン、今度は誰とメール?」 「ん?違うよこれはEXOのこの前のステージ動画みてんだよ。ほら、随分と上手になっただろ?」 そう言われ、ユノに近づきスマホを覗き込む。何気なく触れる腕に心地よさを感じ、チャンミンの神経が腕に集中した。 仲良く二人でひっついて動画を見ていると、 コンコン! ドアをノックする音が響き、 「はい、どうぞ」とユノが答えると同時に 「ユノヒョーン」ズカズカとテミンが部屋に入ってきた。 {しまった!今日こいつが司会だったんだ…忘れてた} チャンミンは露骨に嫌な顔をして、テミンを睨みつけたが そんな事には動じずテミンは 「ユノヒョン、チャンミンヒョン、今日はよろしくお願いします」チャンミンの反対側にまわり、 ユノの手をとった。 振り払う訳にもいかず、ユノは立ち上がり、体勢を変えようとしたが、テミンは腕をからめ、 ユノを見上げて、 「何を見てたんですか?」テミンのネコナデ声がチャンミンの心を逆なでした。 「EXOのステージ動画だよ」 「え〜いいな〜。そういえば、カイがユノヒョンに褒められたって凄く、喜んでましたよ〜 ユノヒョン、僕もダンス頑張ってるんですよ〜、褒めてくださいよ〜」 テミンはチャンミンの視線を意識するかのように、わざとベタベタとユノにまとわりついた。 「わかった、わかった。テミンも凄く上手になったよ。早く戻らないと他のMCと打ち合わせ あるんじゃないのか?」ユノはテミンの肩を持ち、自分から離した。 「あ、いけない!ユノヒョンに会えて嬉しくて、すっかり忘れてました。 ユノヒョン!またボーリング誘ってくださいね」 「え?」 テミンの言葉に、ユノとチャンミンが驚いて、固まってしまったが、テミンは気にせず 「ダメなんですか〜?ユノヒョーン」答えるまで動かないぞ。という風にじっと ユノの前に立ち、ユノを見つめた。  返事に困ったユノだったが、仕方なく 「今は忙しいから、またいつかな」とテミンをドアの向こうに押しやり 「MC頑張れよ!」とドアを閉めた。  閉めた途端に流れる、張り詰めた冷たい空気… 「ふーーん、行くんだ…  ヒョン またテミンとボーリング行くんだ」 「違うよ〜チャンドラ〜今のは仕方なかっただろ〜??行かないよ〜 あいつ、あー言わないと動きそうになかったから…」 必死で言い繕いながら、チャンミンを引き寄せようと 手を伸ばしたが、チャンミンはスルリと身をかわして、ユノの手を拒んだ。 「本番はじまりまーす」 気まずい雰囲気をスタッフの声が打ち消した。 「機嫌なおして、本番頑張ろうぜ!チャンドラ」 「言われなくても、わかってるよ!!」 またしても、チャンミンはユノが肩に回した手を、振りほどきサッサと 前を歩いて行ってしまった。 つづく